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歯がすり減る原因と咬合低位の関係|歯が短くなったと感じたら注意したいこと

「以前より歯が短くなった気がする」
「前歯の先端が平らになってきた」
「歯が欠けたり、被せ物が割れたりすることが増えた」

このような変化がある場合、歯の表面が少しずつすり減る「咬耗」が進んでいる可能性があります。
歯は毎日使うものですから、年齢とともにある程度すり減ること自体は珍しくありません。しかし、歯ぎしりや食いしばりなどによって強い力が長期間加わると、通常よりも早く歯がすり減ることがあります。
さらに、歯のすり減りが複数の歯に広がると、単に歯が短くなるだけではなく、お口全体の噛み合わせの高さが低下する「咬合低位」につながることがあります。
今回は、歯がすり減る主な原因と咬合低位との関係、治療を考える際に大切なポイントについて解説します。

歯がすり減る「咬耗」とは?

歯が上下で接触したり、こすれ合ったりすることで、歯の表面が徐々に失われていく状態を「咬耗」といいます。
初期の段階では、前歯の先端が少し平らになる、奥歯の山がなだらかになるといった変化として現れます。
しかし、咬耗が進行すると、

• 歯が短くなる
• 歯の内部にある象牙質が露出する
• 冷たいものがしみる
• 歯の先端や角が欠ける
• 詰め物や被せ物が壊れる
• 噛みにくくなる

といった問題につながることがあります。
歯は一度大きくすり減ると、自然に元の形へ戻ることはありません。そのため、すり減った部分だけを見るのではなく、なぜ咬耗が進んだのかを確認することが大切です。

歯がすり減る主な原因

歯ぎしり・食いしばり

歯のすり減りに深く関係するのが、歯ぎしりや食いしばりです。
睡眠中の歯ぎしりは、ご本人が気づいていないことも少なくありません。家族から音を指摘されて初めて知る方もいますが、音を立てずに強く噛みしめるタイプもあります。
また、仕事中や運転中、パソコンやスマートフォンを操作しているときなど、集中する場面で無意識に歯を食いしばっていることもあります。
本来、食事や会話をしていないときの上下の歯は、わずかに離れています。しかし、長時間歯が接触していると、それだけ歯や顎の筋肉に負担がかかります。
こうした強い力が繰り返し加わることで、歯の表面が徐々にすり減っていきます。
また、歯ぎしりや食いしばりは天然歯だけでなく、セラミックや被せ物が壊れる原因になることもあります。

▶ 関連記事:咬耗・食いしばりによる補綴物破損とは?

噛み合わせの偏り

噛む力が、すべての歯へ均等に分散されているとは限りません。
歯並びや被せ物の高さ、歯の欠損などによって噛み合わせに偏りがあると、特定の歯だけに強い力が集中することがあります。
例えば、奥歯を失ったままにしていると、残っている歯が本来以上の役割を担うことになります。その結果、前歯や反対側の奥歯に負担が集中し、すり減りや欠けが進むことがあります。
一部の歯だけが極端にすり減っている場合には、単なる加齢による変化ではなく、噛み合わせの問題が隠れていないかを確認する必要があります。

酸によって歯の表面が弱くなっている

歯がすり減る原因は、歯同士の摩擦だけではありません。
酸性の飲食物を頻繁に摂取したり、胃酸が口の中へ逆流したりすると、歯の表面を覆うエナメル質が溶けやすくなることがあります。これを「酸蝕」といいます。
エナメル質が酸によって弱くなった状態で歯ぎしりや食いしばりが加わると、歯のすり減りがさらに進みやすくなります。
炭酸飲料やスポーツドリンク、柑橘類、酢を使った食品などを日常的に摂取している場合は、飲食習慣も含めて原因を考えることが重要です。

硬いものを噛む習慣

氷や硬い飴、ナッツ類などを頻繁に噛む習慣も、歯への負担になります。
また、

• 爪を噛む
• ペンを噛む
• 歯で袋を開ける
• 特定の側だけで硬いものを噛む

といった癖が、特定の歯の摩耗や欠けにつながることもあります。
一度の力だけで歯が大きくすり減るわけではありませんが、毎日の小さな負担が長年積み重なることで、歯の形が変化していくことがあります。

被せ物や詰め物との関係

天然歯と人工の被せ物では、素材の硬さや表面の状態が異なります。
噛み合わせや補綴物の表面調整が適切でない場合、向かい合う天然歯に負担がかかり、すり減りが進むことがあります。
ただし、「硬い素材を使うと必ず天然歯が削れる」という単純な話ではありません。
実際には、

• 補綴物の形
• 表面の滑らかさ
• 噛む力の方向
• 歯ぎしりや食いしばりの有無
• お口全体の噛み合わせ

などが複雑に関係しています。
そのため、セラミックやジルコニアなどの材料を選ぶ際には、強度だけでなく、お口全体の噛み合わせまで考えて設計することが大切です。

歯のすり減りが進むと「咬合低位」につながることがあります

咬合低位とは、歯のすり減りや欠損、治療の繰り返しなどによって、本来あるべき噛み合わせの高さが低くなった状態です。
上下の歯が噛み合ったときの高さは、一本の歯だけで決まるものではありません。
複数の歯が一定の高さを保ち、顎や筋肉と調和することで、お口全体のバランスが成り立っています。
ところが、長年にわたって歯ぎしりや食いしばりが続き、多くの歯が少しずつすり減ると、その高さが次第に失われていきます。
さらに、

• 奥歯を失ったままにしている
• 被せ物の治療を繰り返している
• 詰め物や被せ物が何度も壊れている
• 歯が倒れたり移動したりしている
• 虫歯や歯周病によって複数の歯を失っている

といった要因が重なると、噛み合わせの高さが低下しやすくなります。
つまり、咬耗そのものがただちに咬合低位を意味するわけではありませんが、広い範囲の歯が長期間すり減ることは、咬合低位につながる要因の一つになります。

歯がすり減っていても本人が気づきにくい理由

歯のすり減りや咬合低位は、多くの場合、急に起こるものではありません。
数年から数十年かけて少しずつ進行するため、ご本人は現在の歯の形や噛み合わせに慣れてしまいます。
そのため、

「昔からこの噛み合わせだった」
「特に痛みはない」
「食事はできているから問題ない」

と思われることもあります。
しかし、過去の写真と比較すると、以前より前歯が短くなっていたり、笑ったときに見える歯の量が変わっていたりすることがあります。
また、歯の高さが低くなった分、顎を以前より深く閉じて噛むようになっている場合もあります。
咬合低位では、単に歯が短くなるだけでなく、噛む位置や顎の位置、口元の印象まで変化することがあります。

咬合低位になると起こりやすい問題

歯や被せ物が繰り返し壊れる

咬合低位になると、本来とは異なる位置で噛むようになり、一部の歯や補綴物へ力が集中することがあります。
その結果、

• セラミックが割れる
• 詰め物が外れる
• 被せ物が欠ける
• 天然歯にひびが入る
• インプラントの上部構造に負担がかかる

といったトラブルを繰り返すことがあります。
補綴物が壊れると、「もっと強い素材へ交換すればよい」と考えられがちです。
しかし、破損の背景に咬合低位や強い食いしばりがある場合、材料だけを変えても再び壊れる可能性があります。
何で作るかだけでなく、どこに力が集中し、どのように噛んでいるのかを確認する必要があります。

▶ 関連記事:咬耗・食いしばりによる補綴物破損とは?

顎や筋肉に負担がかかる

噛み合わせの高さが変わると、顎の位置や筋肉の使い方も変化することがあります。
その結果、

• 顎が疲れやすい
• 食事に時間がかかる
• 大きく口を開けにくい
• 顎関節に違和感がある
• 頬やこめかみの筋肉が張る

といった症状につながる場合があります。
ただし、顎の痛みや頭痛などにはさまざまな原因があります。すべての症状が咬合低位によるものとは限りません。
症状だけで判断せず、歯の状態や顎の動き、筋肉の緊張などを含めて診査することが大切です。

見た目や口元の印象が変わる

歯が大きくすり減ると、前歯が短く見えたり、笑ったときに歯が見えにくくなったりすることがあります。
また、噛み合わせの高さが低下すると、口を閉じたときの上下の顎の距離も変化します。
そのため、

• 口元が内側へ入り込んだように見える
• 下顔面が短くなったように感じる
• 口角や口元の印象が変わった
• 前歯が以前より見えにくくなった

と感じる場合もあります。
ただし、口元の変化は加齢や骨格、皮膚、筋肉など多くの要素が関係します。見た目だけで咬合低位と判断することはできません。

噛みにくさが生じる

奥歯の形がすり減ると、食べ物を効率よくすりつぶすことが難しくなる場合があります。
また、噛み合わせが低くなることで顎の位置が変化すると、「どこで噛めばよいか分からない」「以前とは噛む位置が違う」と感じる方もいます。
歯のすり減りに加えて奥歯の欠損やインプラント治療が必要な部分がある場合には、人工歯を入れる場所だけでなく、お口全体の中でどのように噛む力を支えるかを考えることが重要です。

▶ 関連記事:インプラント治療で重要な「噛み合わせ」とは

すり減った歯を高くすれば解決するわけではありません

歯が短くなったのであれば、被せ物やセラミックで高さを戻せばよいと思われるかもしれません。
しかし、噛み合わせの高さを一度に大きく変えると、歯や顎、筋肉が新しい状態へ適応できず、違和感や痛みが生じることがあります。
また、すり減った歯を一本ずつ元の高さへ戻しても、お口全体のバランスが取れていなければ、別の歯へ負担が移る可能性があります。
そのため、咬合低位が疑われる場合には、

• どの歯がどの程度すり減っているか
• 現在どこで噛んでいるか
• 顎がどの位置へ動くか
• 前歯と奥歯がどのように接触しているか
• 歯ぎしりや食いしばりがあるか
• 歯を失っている部分があるか
• 残せる歯と治療が必要な歯はどれか

などを総合的に確認します。
咬合低位が進んでいる場合は、最初から最終的な被せ物を装着するのではなく、仮歯などを用いて新しい噛み合わせを確認しながら治療を進めることがあります。

咬合低位の治療ではお口全体の診断が重要です

すり減りが一部の歯だけに限られている場合は、部分的な修復やマウスピースによる保護で対応できることがあります。
一方で、多くの歯がすり減り、噛み合わせの高さそのものが失われている場合には、一本単位の治療では十分に改善できないことがあります。
そのような場合は、必要に応じて、

• 仮歯による噛み合わせの確認
• セラミックによる歯の形態回復
• 欠損部分へのインプラント治療
• 全顎的な補綴治療
• 治療後のマウスピース

などを組み合わせながら、お口全体の噛み合わせを再構築します。
ただし、既存の被せ物をすべて交換するとは限りません。
残せる歯や補綴物を確認し、現在のお口の状態、患者さんのご希望、治療期間や治療範囲などを考慮しながら計画を立てることが大切です。

▶ 関連記事:フルマウスリコンストラクションとは?全顎治療の目的を解説 何度も歯科治療を繰り返している方へ

治療後も歯ぎしり・食いしばりへの対策が必要です

セラミックなどで歯の形や噛み合わせを整えても、すり減りを起こした原因がなくなるわけではありません。
特に歯ぎしりや食いしばりが続いている場合、治療後の歯や補綴物にも再び強い力がかかります。
そのため、症例に応じて、就寝時にマウスピースを使用して歯を保護することがあります。
また、日中に上下の歯を接触させる癖がないかを意識することも大切です。
通常、食事や会話をしていないときは、上下の歯が常に接触しているわけではありません。パソコン作業や運転、家事などに集中しているときに歯を噛みしめていないか、時々確認してみましょう。
ただし、マウスピースを使用すれば歯ぎしりそのものが必ず止まるわけではありません。
主な目的は、強い力が直接歯や補綴物へ加わることを抑え、歯を保護することです。

このような変化がある方は一度ご相談ください

次のような変化がある場合は、歯のすり減りや咬合低位が進んでいないか確認することをおすすめします。

• 昔より歯が短くなった
• 前歯の先端が平らになった
• 奥歯の溝や山がなくなってきた
• 歯が何本も欠けている
• 詰め物や被せ物が繰り返し壊れる
• 歯ぎしりや食いしばりを指摘された
• 冷たいものがしみる
• 顎や頬の筋肉が疲れやすい

• 奥歯を失ったままにしている
• 噛みにくさや噛む位置の変化を感じる
• 笑ったときに前歯が見えにくくなった

歯のすり減りがあるからといって、必ず大がかりな全顎治療が必要になるわけではありません。
大切なのは、現在の状態と進行の程度を確認し、部分的な対応でよいのか、お口全体の噛み合わせまで考える必要があるのかを見極めることです。

まとめ|歯のすり減りは咬合低位のサインになることがあります

歯がすり減る主な原因には、歯ぎしりや食いしばり、噛み合わせの偏り、酸蝕、硬いものを噛む習慣などがあります。
一部の歯に限られた軽度のすり減りであれば、経過観察やマウスピースによる保護で対応できることもあります。
しかし、長年にわたって多くの歯がすり減り、歯の高さが失われている場合には、咬合低位へ進んでいる可能性があります。
その状態で、欠けた歯や壊れた被せ物だけを治しても、力の偏りが残っていれば再治療を繰り返すことがあります。
当院では、すり減った部分だけでなく、

• なぜ歯がすり減ったのか
• 噛み合わせの高さが保たれているか
• どの歯に負担が集中しているか
• 顎の位置や動きに問題がないか
• お口全体をどのように安定させるか

という点まで確認しながら治療計画を考えています。
「歯が短くなった気がする」「何度治しても歯や被せ物が壊れる」という方は、現在の噛み合わせを一度確認することが、再治療を減らし、歯を長く使うための第一歩になります。

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