Author Archives: 山内浩司

自分に合った歯ブラシ、選べていますか?〜歯ブラシ選びの基本と応用〜

毎日何気なく使っている歯ブラシ。店頭に行くと、さまざまな形・硬さ・大きさのものが並んでいて、「どれを選べば良いのか分からない」という声もよく耳にします。また、通常の歯ブラシ以外にも、“タクトブラシ”や“ワンタフトブラシ”といった補助的なブラシも存在し、用途によって使い分けることで、より効果的なセルフケアが可能になります。
このコラムでは、基本的な歯ブラシの選び方から、用途に応じた特殊ブラシの活用法まで、日々のオーラルケアをワンランクアップさせるためのヒントをご紹介します。

歯ブラシ選びの基本:大きさ・毛の硬さ・形状
まず最初に、通常の歯ブラシを選ぶ際のポイントを確認しましょう。
・ヘッドの大きさ
基本的には「自分の親指の第一関節ぐらいの長さ」が目安とされます。大きすぎると奥歯まで届かず、小さすぎると時間がかかるため、自分の口腔内に合ったバランスの良いサイズを選ぶことが大切です。
・毛の硬さ
「やわらかめ」「ふつう」「かため」の3種類が主流です。
・歯ぐきが敏感な人、歯周病の初期段階の人にはやわらかめ
・健康な歯と歯ぐきを持つ人にはふつう
・しっかり磨きたい人にはかため(ただし、力の入れすぎには要注意)
など、口腔の状態によって使い分けが必要です。
・毛先の形状
平らな「フラットタイプ」、山型の「先細タイプ」、ぎっしり詰まった「超密集タイプ」など、ブラシ部分にも様々な設計があります。歯と歯ぐきの境目を丁寧に磨きたいなら「先細」、歯面をしっかりこすりたいなら「フラット」がおすすめです。

通常の歯ブラシでは届かない場所には“補助ブラシ”を
どれだけ丁寧に磨いていても、歯並びの関係や、歯の形状によって、通常の歯ブラシだけでは清掃が難しい部分が出てきます。そんなときに活躍するのが、補助的なブラシたちです。
・タクトブラシ(歯間ブラシ、ワンタフトブラシ)
いわゆる「ピンポイントブラシ」として、特定の部位を磨くために作られた小さなブラシです。
<タクトブラシ/ワンタフトブラシ>
非常に小さなヘッドと、少し斜めに角度のついたネックが特徴です。
・奥歯の奥(第二大臼歯の遠心面)
・歯並びがガタガタしている部分
・矯正装置の周囲
・親知らずの周辺
など、「通常の歯ブラシでは届きにくい」場所を、ピンポイントで磨くことができます。
ブラシ部分が先細で柔らかいため、歯と歯ぐきの境目に優しく当てることができ、歯周病予防にも非常に効果的です。毎回の歯磨き後に、仕上げとして使用するのがおすすめです。
・歯間ブラシ
歯と歯の間に差し込んで使う、小さなブラシ。特に歯ぐきが下がってきて歯間が広がっている中高年の方や、ブリッジなどの補綴物が入っている方にとっては必須の清掃器具です。
サイズは0番(極細)〜4番(太め)まであり、自分の歯間の大きさに合ったものを選ぶことが重要です。無理に太いものを使うと、歯ぐきを傷つけたり、歯間を広げてしまうリスクがあります。
・電動歯ブラシ
最近では、音波振動式や回転式の電動歯ブラシも人気です。手磨きに比べて一定のリズムで効率よく磨けるのが特長で、正しい使い方をすれば非常に効果的です。ただし、力の入れすぎや長時間の使用には注意が必要で、「電動=何も考えずに磨ける」というわけではありません。むしろ、正しい使い方を理解することが前提となります。
年齢やライフスタイルに応じた歯ブラシの選び方
・乳幼児・小児向け
小さな口に合わせたコンパクトヘッドと、柔らかめの毛が基本です。さらに、子どもが楽しく歯磨きできるように、キャラクター入りや持ちやすい太めの柄など工夫されたものも多く出ています。
・高齢者向け
歯ぐきが痩せてきたり、握力が弱くなった方には、グリップが太く持ちやすい歯ブラシや、やわらかく歯ぐきを傷つけないタイプがおすすめです。また、入れ歯専用のブラシもあり、通常の歯ブラシと併用することで衛生管理がしやすくなります。
・矯正中の方
矯正装置(ブラケットなど)がついている方は、通常の歯ブラシだけでは十分に汚れを落とすのが難しいことがあります。タクトブラシや歯間ブラシ、矯正用のV字カットブラシなどを使って、器具の周囲を丁寧に清掃することが大切です。

「選ぶ+使い分け」で、口腔ケアの質が上がる
歯ブラシは、「1本あればなんとかなる」道具ではありません。毎日のセルフケアにおいては、自分の口腔内の状態やライフスタイルに応じて、“選び”“使い分ける”ことがとても大切です。
たとえば、通常の歯ブラシで全体を磨いたあと、ワンタフトブラシで奥歯の裏側をフォローし、さらに歯間ブラシやデンタルフロスで歯間清掃を行う——これだけでも、プラーク(歯垢)の除去率は大きく変わります。
毎日少しずつでも、正しい道具で正しく磨くことで、歯科医院に頼らなくても自分の歯を守る“本当の意味での予防”が実現できるのです。

まとめ
歯ブラシと一言でいっても、その種類や用途は非常に多岐にわたります。自分の口の状態に合った歯ブラシを選ぶこと、そして必要に応じてタクトブラシや歯間ブラシなどを併用することは、虫歯や歯周病を防ぐための基本です。
「どのブラシを使えば良いのか分からない」「うまく磨けているか不安」という方は、ぜひ歯科医院での歯ブラシ指導を受けてみてください。自分にぴったりの道具と磨き方を知ることは、未来の自分の歯を守る第一歩です。

ご相談 ブランパ梅田院歯科衛生士 岩崎

 

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「口呼吸」が歯と体に及ぼす影響とは?〜その習慣、見逃していませんか〜

ふと気づくと、口をポカンと開けて呼吸している――。これは、特に子どもや思春期の若年層に多く見られる「口呼吸」の癖です。しかし、実はこの癖、単なる見た目の問題ではありません。口呼吸は、歯並びやかみ合わせを乱すだけでなく、虫歯や歯周病、さらには全身の健康にまで悪影響を与える可能性があるのです。

本コラムでは、「なぜ口呼吸がいけないのか」「歯にどのような影響を与えるのか」を中心に、見逃されがちな口呼吸のリスクについて解説していきます。

鼻呼吸と口呼吸の違い

まず、私たちが本来行うべき呼吸は「鼻呼吸」です。鼻には空気中の異物やウイルスをフィルターのように取り除き、湿度や温度を調節する機能が備わっています。一方、口呼吸はこの機能をバイパスして直接空気を体内に取り込むため、乾燥した冷たい空気や病原体がそのまま喉や肺に届いてしまいます。

このように、口呼吸は呼吸機能そのものにもデメリットがありますが、口腔内の健康にも深刻な影響を及ぼすのです。

口呼吸が歯に与える影響

1. 口腔内が乾燥し、虫歯・歯周病リスクが上昇
鼻呼吸をしていれば、口の中は常に適度な湿度が保たれ、唾液の自浄作用によって細菌の増殖が抑えられます。しかし、口呼吸をすると唾液が蒸発しやすくなり、口腔内が乾燥しがちになります。

唾液には、虫歯菌や歯周病菌の活動を抑える抗菌作用や、酸を中和する緩衝作用があります。口が乾燥するとこれらの機能が弱まり、虫歯や歯周病のリスクが一気に高まります。特に前歯の裏側や上顎の歯列は、乾燥の影響を受けやすく、トラブルが起きやすい部位とされています。

2. 歯並びやかみ合わせが乱れやすくなる
成長期の子どもが長期間口呼吸をしていると、舌の位置や筋肉のバランスに異常が生じ、歯列に悪影響を与えることがあります。

本来、舌は上顎に軽く接しているのが正常な位置です。鼻呼吸をしていれば、舌は自然と上顎に収まり、上顎の正常な成長を促します。しかし口呼吸をしていると、舌は低い位置に下がり、上顎の発育が妨げられます。その結果、上顎が狭くなり、歯が並ぶスペースが足りずに歯列不正(ガタガタの歯並び)を引き起こすことがあります。

また、口周囲の筋肉が弱くなることで、出っ歯(上顎前突)や開咬(奥歯はかみ合うのに前歯が閉じない状態)などの不正咬合が生じやすくなります。

3. 口臭や舌苔(ぜったい)の増加
口が乾燥すると、舌の表面に白っぽい汚れ(舌苔)がたまりやすくなります。これは細菌や食べかすの集合体で、口臭の大きな原因となります。特に朝起きたときに「口の中がネバネバする」「臭いが気になる」と感じる人は、無意識に口呼吸になっている可能性があります。

4. 歯の脱灰と酸性化
唾液には、食後に口腔内が酸性に傾いた状態を中和し、歯を再石灰化させる作用があります。口呼吸によって唾液量が減ると、この中和作用が弱まり、歯の表面のミネラルが溶け出す「脱灰(だっかい)」が進行しやすくなります。これが初期虫歯の原因となります。

口呼吸の原因とは?

口呼吸の背景には、さまざまな原因があります。

・アレルギー性鼻炎や慢性鼻炎などによる鼻づまり
・扁桃肥大やアデノイド肥大などによる気道の狭窄
舌の癖(舌突出癖)や口唇の筋力低下
長期間の指しゃぶりや口を開ける癖
・睡眠時の無呼吸症候群などの呼吸障害

特に子どもの場合、早い段階で原因を突き止め、口呼吸を改善することが、歯並びの健全な発育や、全身の健康維持につながります。

どうすれば口呼吸を防げるか?

口呼吸を防ぐためには、以下のような対策が有効です。

1. 原因となる鼻づまりの治療
耳鼻科的な問題がある場合は、専門的な治療を受けることが第一歩です。アレルギーや慢性鼻炎がある人は、定期的な診察と適切な薬物療法を検討しましょう。

2. 口を閉じる意識づけと筋トレ
「あいうべ体操」や口唇・舌のトレーニングを行うことで、口周囲の筋力が改善し、自然と口を閉じやすくなります。特に舌の正しい位置(上顎の中央)を意識することが重要です。

3. 睡眠時の工夫
寝ている間の口呼吸には、「口閉じテープ」や「ナイトマウスピース」なども有効です。寝る前に口を閉じる習慣をつけることで、無意識のうちの口呼吸を防ぎます。

4. 歯科医院でのチェックと指導
歯科医院では、口呼吸による影響のチェックや、MFT(口腔筋機能療法)などの指導も受けられます。特にお子さまの場合、早期発見・早期対応が歯列や発育への悪影響を防ぐカギとなります。

まとめ

口呼吸は、見た目だけでなく、歯や歯ぐき、かみ合わせ、さらには全身の健康にまで悪影響を及ぼす習慣です。とくに成長期の子どもにとっては、将来の歯並びや骨格形成にも深く関わる重要な問題です。

「いつも口が開いている」「寝ているときに口が乾く」「歯並びがガタガタしてきた」――そんなサインに気づいたときは、早めに歯科医院や耳鼻科で相談することをおすすめします。

健康な歯と体を守るために、今日から「鼻呼吸」を意識してみましょう。それは、あなたの未来の笑顔を守る大切な一歩になるはずです。

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歯科治療が命を守る?〜誤嚥性肺炎と歯科の深い関係〜

近年、医療や介護の現場で「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」という言葉を耳にする機会が増えています。特に高齢者においては、この病気が命に関わる重大なリスクとなることが知られており、実際に日本では肺炎による死亡の多くが誤嚥性肺炎によるものとされています。
では、その予防において「歯科医療」がどのような役割を果たすのか、ご存知でしょうか?「歯医者は虫歯を治す場所」と思われがちですが、実は口腔内の衛生管理や嚥下(えんげ)機能の改善を通じて、誤嚥性肺炎の予防に大きく貢献しています。
本コラムでは、誤嚥性肺炎の概要から、口腔内の環境がどのように肺炎と関係するのか、そして歯科医療が果たすべき役割について詳しく解説していきます。

誤嚥性肺炎とは?~「食べ物の誤飲」だけが原因ではない~
「誤嚥(ごえん)」とは、食べ物や飲み物、あるいは唾液や胃液などが誤って気管に入り、肺に到達してしまうことを言います。通常は、むせたり咳き込んだりすることで排除されますが、加齢や病気により咳反射や嚥下反射が低下していると、気づかないうちに細菌を含んだ物質が肺に入り込み、炎症を起こします。これが「誤嚥性肺炎」です。
特に高齢者では、寝ている間や食後の軽い誤嚥が繰り返される「慢性微小誤嚥(silent aspiration)」が多く見られ、自覚症状がほとんどないまま肺炎が進行することもあります。

なぜ誤嚥で肺炎が起こるのか?~カギは「口の中の細菌」~
口の中には、常に数百種類、数千億個の細菌が生息しています。健康な人であれば問題ありませんが、口腔内の清掃が不十分になると、虫歯菌や歯周病菌をはじめとする病原性の高い細菌が繁殖します。
これらの細菌が唾液や食物に乗って誤って気道に入り込んだとき、肺の中で感染を引き起こすリスクが高まるのです。つまり、**誤嚥性肺炎の本質は「口の中の細菌による肺の感染症」**とも言えます。
したがって、誤嚥性肺炎を予防するためには、単に食べ方や姿勢を工夫するだけでなく、口腔内の清潔さを保つことが極めて重要なのです。

誤嚥性肺炎を引き起こす口腔内の問題とは
1. 歯垢や歯石の蓄積
プラーク(歯垢)は細菌の塊であり、誤嚥時に肺に入ると重篤な肺炎の原因となります。特に歯周病が進行している口腔内では、病原性の高い嫌気性菌が多く存在しており、肺炎の重症化リスクが高まります。
2. 義歯の不衛生
入れ歯の表面には微細な凹凸があり、プラークやカンジダ菌が付着しやすくなっています。夜間も装着したまま寝ていると、唾液の自浄作用も低下し、細菌が増殖しやすくなります。
3. 唾液の減少(口腔乾燥症)
唾液には抗菌作用や自浄作用があり、誤嚥された異物を洗い流す役割も担っています。加齢や薬の副作用、全身疾患によって唾液量が減少すると、感染リスクが増します。
4. 舌苔(ぜったい)や口腔内の汚れ
舌の表面には細菌や食べかすが溜まりやすく、これが口臭や誤嚥性肺炎の原因となります。特に寝たきりの方や要介護者では、舌の清掃が行き届かないケースが多く見受けられます。

歯科治療・口腔ケアが果たす誤嚥性肺炎予防の役割
ここで、歯科の役割が大きく関わってきます。誤嚥性肺炎の予防において、歯科医師や歯科衛生士による専門的な口腔ケアが非常に重要であることが、近年さまざまな研究によって明らかになっています。
1. 定期的な専門的口腔ケア
歯石除去や義歯の清掃、舌苔の除去などを定期的に行うことで、口腔内の細菌数を大幅に減らすことができます。特に高齢者施設や病院での口腔ケアの導入は、誤嚥性肺炎の発症率を下げる効果が示されています。
2. 嚥下機能の評価と訓練(摂食嚥下リハビリ)
歯科医師や歯科衛生士が、嚥下障害の有無をチェックし、必要に応じて「パタカラ体操」や舌の運動、発声訓練などを通じて嚥下機能の改善を図ります。これにより、誤嚥自体を減らすことができます。
3. 口腔機能低下症の早期発見
「オーラルフレイル(口の虚弱)」と呼ばれる初期の機能低下を見逃さず、早期に介入することが、高齢者の全身の健康維持にもつながります。
4. 食形態や食具のアドバイス
歯科から食事の形態(きざみ食、ミキサー食など)や、飲み込みやすい姿勢・補助具の選定などについても指導できるため、日常の誤嚥リスクを下げるサポートが可能です。

誤嚥性肺炎の予防は“チーム医療”で
近年、医科歯科連携の重要性が強調されており、高齢者や在宅療養者に対する医療においては、歯科の介入が欠かせない存在となっています。
たとえば、退院後の在宅療養中に歯科医師が訪問して口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎の再発を防ぎ、再入院を回避できたというケースも少なくありません。介護職・看護師・医師・栄養士と連携しながら、歯科の視点から口腔衛生と嚥下機能を維持することが、高齢者の「生活の質(QOL)」の向上に大きく寄与します。

高齢者だけではない?誤嚥性肺炎のリスクは誰にでもある
誤嚥性肺炎は高齢者に多い病気ではありますが、若年層であっても、ストレスや疾患、服薬の影響などで唾液が減少したり、体調不良時に寝たまま食事を摂ったりすることで、リスクがゼロとは言えません。
とくに介護や看護の現場では、「まだ若いから大丈夫」と過信せず、日々の口腔ケアを徹底することが大切です。歯磨きやうがいができない人には、保湿剤やスポンジブラシを用いた清掃でも効果があります。

まとめ:歯科治療が「命を守る医療」になる時代
これまで歯科医療は「痛みをとる」「虫歯を治す」といった役割に限られて語られることが多くありました。しかし、今や歯科は「口から始まる全身の健康」を守る重要な医療分野として再評価されています。
誤嚥性肺炎の予防において、口腔の清掃と機能維持は欠かせない要素であり、それを担うのが歯科医師・歯科衛生士の専門的な知識と技術です。日々の口腔ケアが肺炎を防ぎ、命を守る手段となる――それがこれからの歯科の新たな価値です。
家族や大切な人の命を守るために、そして自分自身の老後の健康を守るために、今こそ「口の健康」に目を向ける時です。

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“直接伝える”で叶う、自分だけのセラミック治療

現代の歯科治療において、審美性や機能性に対する患者の要求は年々高まっており、それに応えるべく歯科医療の現場も進化を続けています。特に審美補綴治療においては、補綴物の精度や自然な見た目が重要視されており、その質を大きく左右するのが「歯科技工士」の存在です。本コラムでは、歯科医院に専属の歯科技工士が常駐していることの優位性について、外部の歯科技工所との比較を交えながら詳述します。

1. 直接コミュニケーションが可能:希望をダイレクトに伝えられる利点
一般的に、補綴物(クラウンやインレー、ラミネートベニアなど)は歯科技工所に外注されることが多く、歯科医師が患者から得た情報をもとに技工士へ指示を出します。しかしこのプロセスには、「伝言ゲーム」のような情報の齟齬が生じる可能性があります。
これに対し、医院内に専属の歯科技工士がいる場合、患者が自ら技工士と直接コミュニケーションをとることが可能です。たとえば、セラミッククラウンの色味や透明感、形状の希望について、患者がその場で技工士に伝えることができるため、イメージのズレが最小限に抑えられます。これにより、個々の患者に合わせた“オーダーメイド”の補綴物が実現可能となるのです。

2. スピードと柔軟性:修正対応が即日可能
外部の技工所に補綴物を依頼する場合、型取り(印象採得)→模型作成→郵送→製作→返送という一連の工程に最低でも数日、場合によっては1週間以上かかることがあります。さらに、出来上がった補綴物に不具合や患者の要望との相違があった場合、再び修正依頼と配送が必要となり、治療のスケジュールに大きな影響を与えることもあります。
その点、院内技工士がいれば、修正対応を即日、もしくは翌日には完了させることが可能です。チェアサイドで微調整を行うこともでき、仮合わせ時に技工士が立ち会えば、その場で研磨や形態修正を施すこともできます。この柔軟な対応は、患者にとっては通院回数や治療期間の短縮という形で恩恵を受けられるほか、医院としても効率的な診療が可能となります。

3. 技術的な相談が院内で完結
補綴物の製作にあたっては、単に歯型をもとに模型を作成するだけではなく、咬合(咬み合わせ)や隣在歯との調和、フェイシャルラインとの関係など、さまざまな技術的配慮が必要です。これらを歯科医師と技工士が密に情報共有できる体制があることは、治療の質を飛躍的に向上させます。
専属技工士がいれば、咬合器の設定やシェードテイキング(色合わせ)、フェイスボウトランスファーといった高度な技工支援をリアルタイムで行うことができます。また、症例に応じて素材の選定や設計の相談も容易で、医師と技工士のコラボレーションがスムーズに機能します。

4. 患者の満足度向上と医院のブランディング
審美補綴治療は見た目に大きく関わるため、患者の満足度に直結します。治療結果が期待に沿わなければ、「せっかく高い費用を払ったのに…」という不満につながり、医院への信頼が損なわれる可能性もあります。
院内技工士の存在は、患者との信頼関係を構築するうえで大きな役割を果たします。たとえば「この技工士さんが自分の歯を作ってくれた」という認識があることで、安心感が生まれ、結果として治療全体への満足度が高まります。医院としても、質の高い補綴物を提供できる体制をアピールすることで、他院との差別化を図り、ブランディング戦略にもつながります。

5. 高度なケースへの対応力
近年では、ジルコニアやe.maxなどの高強度セラミック材料、CAD/CAM技術の進化によって、補綴物の製作プロセスにも高度な知識と技術が求められるようになっています。特にフルマウス補綴やインプラント上部構造のような複雑症例では、技工士の技量が治療結果を左右します。
医院内に熟練した技工士が常駐していれば、これらの高度症例にもスムーズに対応可能です。CTや口腔内スキャナのデータを共有しながら設計を進めることができ、デジタル技工との連携も強化されます。将来的には3Dプリンティング技術の導入による迅速な試適や、個別設計に対応したデジタルワークフローも実現しやすくなります。

結語:これからの歯科医院に求められる“院内連携力”
これまで述べたように、歯科医院内に専属の歯科技工士がいることで、患者の希望を的確に反映した補綴物の製作、迅速な修正対応、高度な症例への柔軟な対応など、数多くのメリットが得られます。これは単なる“技工の外注”から、“歯科医療チームの一員としての技工士”への発想の転換と言えるでしょう。
今後、より質の高い歯科治療が求められる時代においては、医師、衛生士、技工士が一体となって診療にあたる体制が、患者満足度の向上に直結すると言えます。その意味で、院内技工士の存在は、これからの歯科医院の在り方を象徴する重要なキーワードのひとつとなるでしょう。

ブランパ梅田常勤スタッフ

歯科医師 山内

歯科技工士 関西

歯科衛生士 岩崎

 

よろしくお願いいたします

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