歯が抜けたらまずすること|応急処置・リスク・治療方法・よくある質問
突然、歯が抜けてしまったとき、あなたはどう対応すべきか知っていますか?事故や外傷、重度の歯周病、虫歯の進行など、歯が抜ける原因はさまざまです。特に前触れもなく歯が抜けてしまうと、驚きや不安から適切な対応ができず、その後の治療に悪影響を与えることがあります。
本コラムでは、歯が抜けた直後に取るべき行動、放置することで生じるリスク、そして適切な治療法について詳しく解説します。さらに、患者様からよく寄せられる質問にもお答えしながら、歯を失ったときに慌てずに行動できる知識をお届けします。
歯が抜ける主な原因
歯が抜ける原因はさまざまですが、大きく分けると以下のような要因があります。
1. 外傷や事故による脱落
転倒やスポーツ中の接触、交通事故など、物理的な衝撃によって歯が抜けることがあります。とくに前歯に多く見られます。
2. 重度の歯周病
歯周病は歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてしまう病気です。進行すると歯がグラグラと動きはじめ、最終的には自然に抜け落ちてしまうこともあります。
3. 重度の虫歯
虫歯が神経にまで達して長期間放置すると、歯の根が破壊され、残存する歯質が支えられずに脱落することがあります。
4. 歯の破折やヒビ
歯の根が割れたり、縦にヒビが入ってしまった場合、抜歯が必要になることがあります。治療のタイミングを逃すと自然脱落するケースもあります。
歯が抜けたときにまずするべき応急処置
歯が抜けたときは、一刻も早い対応がその後の治療結果を大きく左右します。特に外傷で歯が完全に抜け落ちた(脱落した)場合には、迅速で適切な応急処置が必要です。
1. 抜けた歯を拾う
可能であれば、抜けた歯を探して拾います。このとき、根の部分(歯の先端)には触れず、歯冠(白い部分)を持つようにしましょう。
2. 歯の汚れは水で軽く洗う
汚れていても強くこすらず、水道水でサッと洗い流す程度にとどめましょう。歯根膜(歯の表面にある繊維)を傷つけないことが重要です。
3. 生理食塩水や牛乳に浸す
すぐに歯科医院に行けない場合は、歯を生理食塩水または牛乳に浸して保存します。乾燥させてしまうと再植が難しくなります。
4. できるだけ早く歯科医院へ
抜けた歯を元の位置に戻す「再植」は、時間との勝負です。30分以内が理想、1時間以内であれば成功率が高いとされています。可能な限り早く歯科医院を受診しましょう。
歯が抜けたまま放置するリスク
歯が抜けても、「痛みがない」「1本くらい問題ない」と考えて放置してしまう方もいますが、これは非常に危険な判断です。以下のようなリスクが知られています。
1. 噛み合わせの乱れ
歯が1本抜けただけでも、隣接する歯や噛み合う歯が動き始め、全体の噛み合わせにズレが生じます。これにより、食事のバランスが崩れ、他の歯に負担がかかるようになります。
2. 顎関節症のリスク
噛み合わせの変化は、顎関節にも影響を与えます。顎の痛み、開閉障害、頭痛などを引き起こす「顎関節症」につながることもあります。
3. 発音障害や見た目の変化
前歯が抜けると、サ行やタ行などの発音に支障をきたすことがあります。また、空間が空いた口元は審美的にも大きな変化を与え、見た目に自信を失う原因になります。
4. 残っている歯の寿命が縮まる
歯が抜けた部分にかかるはずだった力が、他の歯に集中するため、残っている歯への負担が増加し、結果として寿命が短くなります。
5. 顎の骨がやせてしまう
歯を失うと、その部分の顎の骨(歯槽骨)が刺激を失い、次第に吸収されてしまいます。これにより、入れ歯やインプラントの適応が難しくなることもあります。
歯が抜けた後の治療方法
歯を失った後は、放置せず、できるだけ早く適切な治療を受けることが大切です。以下に代表的な治療法を紹介します。
1. 再植(外傷などで歯が完全に抜けた場合)
抜けた歯が保存状態良好で、歯根膜が生きていれば、元の位置に戻す再植が可能です。ただし、すべてのケースで成功するわけではなく、歯科医師の判断が必要です。
2. ブリッジ
失った歯の両隣を削って橋渡しのように人工歯を装着する方法です。保険適用の場合は銀歯になりますが、自費でセラミック製にすることも可能です。ただし、健康な歯を削る必要があります。
3. 入れ歯(部分義歯)
着脱式の人工歯を装着する治療法で、比較的安価に対応可能です。取り外しができる点がメリットですが、装着感に違和感を感じる人もいます。
4. インプラント
顎の骨に人工歯根を埋め込むことで、天然歯に近い機能と見た目を回復できる治療です。周囲の歯に負担をかけないため、長期的な予後が良好とされています。外科手術が必要で、費用も高額ですが、現代の歯科医療における第一選択とされることが増えています。
抜けた歯をそのままにしないために
歯を1本失うことは、見た目以上にお口全体の健康に大きな影響を与えます。「1本くらい」と軽視せず、できるだけ早く歯科医院を受診し、適切な処置と今後の治療方針を相談しましょう。早期の対応こそが、将来の口腔環境を守る鍵となります。
よくある質問(Q&A)
Q. 歯が抜けたとき、保存液がない場合はどうすればいい?
最適なのは「保存液」ですが、なければ牛乳で代用できます。それもなければ、生理食塩水や、本人の口の中(頬の裏側)に入れて湿らせておくのもひとつの手段です。乾燥は絶対に避けてください。
Q. 歯が抜けた後、痛みがなければ放置しても問題ない?
痛みがなくても、放置は絶対に避けるべきです。見えない部分で歯並びや噛み合わせに悪影響が出るだけでなく、他の歯の寿命を縮めるリスクもあります。
Q. 子どもの乳歯が抜けたときも歯医者に行く必要はある?
自然に抜けた乳歯であれば基本的に心配いりませんが、転倒などで早期に抜けてしまった場合は歯科医院で確認を受けた方が安心です。永久歯への影響が出る可能性があります。
Q. 差し歯や被せ物が取れた場合も「歯が抜けた」と考えてよい?
見た目には同じように感じるかもしれませんが、土台の歯が残っていれば抜けたわけではありません。すぐに歯科医院を受診すれば再装着や修復が可能なケースも多くあります。
Q. 歯が抜けた後にインプラントはすぐにできる?
ケースによります。骨の状態や抜歯の理由に応じて、すぐに埋入できる「即時埋入」が可能な場合と、一定期間の治癒を待つ必要がある場合があります。精密な検査と診断が必要です。
カウンセリングお越しください。
2025年5月22日 カテゴリ:未分類