アーカイブ: 5月 2025

セラミックは割れやすい?歯科医が解説する原因・予防法・対処法

はじめに:セラミック治療への不安「割れやすいのでは?」

セラミックによる審美治療は、自然な見た目と耐久性を兼ね備えた補綴方法として、近年ますます多くの患者に選ばれています。特に前歯や小臼歯など、審美性が求められる部位で高い人気を誇ります。

一方で、「セラミックは陶器だから割れやすいのでは?」「硬いものを噛んだらすぐに欠けそう」といった不安の声もよく聞かれます。

本コラムでは、セラミックが実際にどれほどの耐久性を持っているのか、割れるリスクはどのような状況で生じるのか、また破損時の応急処置や注意点、よくある質問とその回答について、専門的な視点から分かりやすく解説します。

セラミックは本当に割れやすいのか?

セラミック=「陶器」のイメージは正確?

一般的に「セラミック」というと、「陶器のように繊細で割れやすいもの」という印象を持たれがちですが、実際の歯科用セラミックは、極めて高い強度を持つよう設計されています。

とくに、以下のような種類のセラミック素材が歯科領域で使用されています:

オールセラミック(e.maxなど):強化ガラス系セラミックで、審美性と強度のバランスに優れる

ジルコニアセラミック:非常に高い曲げ強度(1000MPa以上)を持ち、臼歯部でも使用可能

メタルボンドセラミック:内側に金属フレームを持ち、割れにくさを向上させた構造

したがって、日常的な咀嚼程度では簡単に割れることはほとんどありません。

天然歯より硬いが「衝撃に弱い」性質も

セラミックは、金属や天然歯より「硬度(すり減りにくさ)」は高い一方で、「靭性(しなやかさ)」は低いため、強い一点集中の衝撃やねじれには弱いという性質を持ちます。

たとえば以下のような状況では、破損のリスクが高まります:

突然、硬い異物(骨、金属片など)を咬んだとき

噛み合わせが不適切なまま長期間使用したとき

食いしばり・歯ぎしりが強い方(ブラキシズム)

外傷(転倒、ぶつけるなど)

セラミックの厚みが不十分な状態での設計

セラミックを割れにくくするための注意点

正しい噛み合わせの調整

セラミッククラウンやインレーを装着した際、噛み合わせが不自然な状態で放置されると、特定の歯に過度な力がかかり、破損の原因になります。治療後には歯科医師による適切な咬合調整が重要です。

歯ぎしり・食いしばりのコントロール

ナイトガード(マウスピース)を就寝時に装着することで、無意識の歯ぎしりや食いしばりからセラミックを保護することができます。歯科医院での相談をおすすめします。

極端に硬いものは避ける

氷を噛み砕く

焼き鳥の串や銀杏などの固い種

ピーナッツの殻ごと、または煎餅の端など

これらはセラミックに強い衝撃を与える可能性があるため、日常的に避ける意識が重要です。

定期検診での確認

経年劣化や噛み合わせの変化により、セラミックにわずかなクラックが入ることもあります。定期的な歯科検診で早期発見・対処が可能です。

セラミックが割れてしまったときの対処法

1. 破片を保存する

割れてしまったセラミックの破片は、歯科医院での修復や診断に役立つ場合があります。洗って清潔に保ち、乾燥させずに持参してください。

2. 無理に使用しない

割れたままの状態で食事を続けると、破片で口腔内を傷つける、さらなる破損を招く、接着面が劣化するなどのリスクがあります。使用を中止し、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。

3. 応急的に痛みがある場合

痛みやしみる症状がある場合は、市販の痛み止めの服用や、冷水や刺激物を避けるといった方法で応急的に対応し、歯科医院での診察を受けてください。

よくある質問(Q&A)

Q1:セラミックはどのくらい持ちますか?

**A:** 使用状況や口腔内環境により異なりますが、平均して10年以上使用されるケースも多く、適切なケアと定期検診を行えば長期使用が可能です。

Q2:保険の銀歯のほうが丈夫ですか?

**A:** 金属は衝撃には強いですが、審美性や歯ぐきとの適合性ではセラミックが優れています。破損のリスクは使い方次第で抑えられます。

Q3:セラミックが割れたら元に戻せますか?

**A:** 小さな欠けであれば修復が可能なこともありますが、多くの場合は再製作が必要です。早期の対応が肝心です。

Q4:自分が歯ぎしりしているか分かりません。

**A:** 朝起きたときの顎の疲れや、歯の摩耗痕、頬の内側の圧痕などがサインです。不明な場合は歯科医院での診察をおすすめします。

まとめ

セラミックは確かに「割れる可能性のある素材」ではありますが、正しい設計と使用、そして患者の意識によって、十分に長期間安定して使用できる素材です。「セラミックはすぐ割れるから不安」と敬遠するのではなく、メリットと注意点を理解したうえで上手に付き合うことが、審美性・機能性を高める第一歩となります。

不安な点がある方や、過去に破損を経験された方も、まずは歯科医院で自分のかみ合わせや使用状況について相談してみることをおすすめします。

 

また割れるということが全てネガティブ要素かと言うとそうでもありません。自動車など意図的に衝撃により凹むように設計しているのはぶつかった時に相手も中の人にも衝撃を抑える役目もあります。

歯においてはセラミッククラウンなどの人工物は作り直せますが、中の歯や歯を支える歯周組織への衝撃を和らげる可能性も金属より優れていると言えるかと思います。

お気軽にご相談にお越しくださいませ。

 

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