歯を事故で失ったらどうする?適切な対処法と放置によるリスクを解説

はじめに

日常生活において、交通事故やスポーツ中の接触、転倒、打撲などによって、突然歯を失ってしまうことがあります。このような突発的な事態は、誰にでも起こりうるものであり、迅速かつ適切な対応がその後の治療成績に大きく影響を及ぼします。

また、「1本くらい歯が抜けても支障ない」「忙しくて治療に行けない」などの理由で放置してしまうと、思わぬ口腔内・全身のトラブルを引き起こす可能性もあります。本コラムでは、歯を失ってしまった際に取るべき対処法と、放置した場合に考えられるリスクについて、専門的視点から詳しく解説します。

歯を失った直後の対処

歯が抜けてしまった場合(完全脱臼)

事故などで歯が完全に抜け落ちた場合、その歯が「保存可能な状態」であれば、元の位置に戻す再植(再植術)が可能なケースもあります。成功率を高めるためには、以下のような応急処置が重要です。

歯の根を持たない(歯根膜を保護するため、歯の根元部分には触れない)

汚れていても水道水で軽くすすぐ程度にし、ゴシゴシこすらない

牛乳、生理食塩水、あるいは口の中に入れて保管して、すぐに歯科医院へ

再植の成功率は、脱落後30分以内の処置が最も高く、それ以降は時間とともに低下します。特に乳歯では再植は基本的に行いませんが、永久歯であれば早期対応によって歯の保存が可能です。

歯の一部が欠けた場合

歯の破折(かけた、折れた)などの場合も、かけた部分を持参することで、コンポジットレジンによる修復や、接着による応急処置が可能な場合があります。破折の程度によっては神経まで達していることもあるため、早めの受診が重要です。

痛みや出血がある場合の対処

歯の損傷に伴って歯茎から出血している場合、清潔なガーゼやティッシュを使って5〜10分程度圧迫止血を行います。痛みが強い場合は、市販の鎮痛剤を一時的に使用してもかまいませんが、根本的な処置は必ず歯科医院で受けましょう。

歯を失ったまま放置することのリスク

噛み合わせの崩壊と咀嚼能力の低下

歯を1本でも失うと、口腔内のバランスが大きく崩れます。失った部分に隣接する歯は時間の経過とともに倒れ込み、上下の噛み合う歯も対合歯がないために伸びて(挺出して)しまいます。これにより本来の咬合関係が失われ、咀嚼効率が著しく低下します。

咀嚼力の低下は消化器への負担を増やすだけでなく、食事の楽しみを損なう原因ともなり、栄養バランスやQOL(生活の質)に悪影響を及ぼします。

顎関節症のリスク増加

片側の歯を失った場合、人は無意識に反対側の歯ばかりで咀嚼するようになります。これにより、左右の咬合バランスが崩れ、顎関節に過剰なストレスがかかることがあります。長期的には、顎の痛み、関節の音、開口障害など、顎関節症を発症するリスクが高まります。

発音障害や審美性の低下

前歯を失った場合、審美面だけでなく、発音にも影響します。特に「サ行」や「タ行」などの発音は、歯の位置や空気の流れが正しくないと不明瞭になります。また、前歯がないことによる見た目の印象の変化は、本人の自信喪失や対人関係への影響を招くこともあります。

歯周病や虫歯リスクの増加

歯が抜けた部分は清掃が行き届きにくく、隣接する歯に汚れが溜まりやすくなります。加えて、傾いた歯や挺出した歯は歯ブラシが届きにくくなるため、歯周病やむし歯のリスクが高まります。放置期間が長くなるほど、治療が複雑化する傾向があります。

骨の吸収(顎骨の減少)

歯を失うと、咬合による刺激が失われるため、顎の骨(歯槽骨)は徐々に吸収されて痩せていきます。これは義歯が合わなくなる原因となるだけでなく、将来的にインプラント治療を検討する際に、骨造成などの外科的処置が必要になる可能性もあります。

歯を失った場合の治療選択肢

ブリッジ治療

両隣の健康な歯を削って連結し、失った歯を補う方法です。比較的短期間で治療が完了し、固定式で違和感が少ないという利点があります。ただし、支台歯への負担や削合の必要性がデメリットです。

入れ歯(義歯)

取り外し可能な装置で、保険適用内で対応可能なケースも多く、費用的な負担が少ないのが特徴です。ただし、装着時の違和感、咀嚼効率の低下、金属バネの見た目など、使用に慣れるまでに時間がかかることがあります。

インプラント治療

人工のチタン製の歯根を骨に埋入し、その上に被せ物をする治療法です。隣接する歯を削らず、天然歯に近い感覚で咀嚼が可能となるのが最大の利点です。外科手術が必要であることや、一定の費用がかかる点が考慮されますが、長期的な予後を考えると非常に有効な選択肢です。

まとめ

事故などで歯を失った際には、まず冷静に適切な応急処置を行い、可能な限り早急に歯科医院を受診することが重要です。そして、たとえ1本の歯であっても「なくても大丈夫」と放置せず、その影響をしっかり理解したうえで治療方針を検討する必要があります。

咬合、審美、発音、顎関節、全身とのつながり──歯は単なる「噛むための道具」ではなく、私たちの健康と生活に密接に関わる存在です。歯を失った時点での対応が、その後の口腔環境を大きく左右することを、ぜひ知っておいていただきたいと思います。

ブランパ歯科は即日完了も可能な歯科治療を行って来ました、急なご相談や審美修復も可能です。

先ずは無料相談へお越しくださいませ。

 

  カテゴリ:未分類